キヨシローの思い出

矢野顕子と歌っている動画を発見して、思わず書きたくなってしまったから書く。

それは2002年のフジロックはGreen Stageでの出来事だ。この年はキヨシローがあらゆるステージに現れるってことで話題になった。前夜祭ではシークレットで突然泉谷しげるらと現れて、アコースティックセットを披露してくれた。これからフジロックが始まるんだという熱気が凄まじかった。

前夜祭:シークレットゲスト@レッド
初日:忌野・泉谷・スパイスマーケット@ヘブン
二日目:忌野清志郎&矢野顕子@グリーン
最終日:LOVE JETS@レッド深夜

で、矢野顕子とのライブがこれ。


矢野顕子 & 忌野清志郎 - ひとつだけ Fuji Rock '02


ぼくはこの場所にいた。前に出演していた「TRIK TURNER」の最後あたりにモッシュピットに入り、前から3列目あたりで待機していた。とても暑い夏の日。日差しがとてつもなくて、ハイネケンポカリスエットを何杯も飲んだような気がする。確か、「ひとつだけ」は最後の方に演奏されて、まわりでは涙が止まらなくなっている人もいて、なんだかさわやかな風が吹いてきて、ぼくの涙腺もゆるゆるだった。陳腐な言い方で申し訳ないけど、物凄く感動したことを覚えている。

悲しい気分の時も ぼくのこと
忘れないでいて欲しいよ ベイベー ねぇお願い


歌詞もちょこっと変えて、わたしはぼくになって、もちろんキヨシローだからベイベーと言ってくれる。最高のセッションで、二人の間のすごく通じ合っている感が最高だった。ともすればあくが強くて、2chのフジ潰スレ等では"アンダワキヨシロプライマル"なんて揶揄されていることもあったけれど、そんなこんなも含めてキヨシローは思い出をくれたし、まだまだこれからもなにかを残してくれるんだと思っている。

で、この話は2006年のフジロックに帰結される。その年もキヨシローがブッキングされていて、その7月11日に病気が発覚し、キヨシローは「この新しいブルースを楽しむような気持ちで」治療に入った。

初日、オレンジコートに矢野顕子が出演し、僕もその場にいた。前から3列目ではなかったけれど、PA前の正面で見ていた。唐突にあっこちゃんがMCを始める。「キヨシローさん、聴いてるかな?」そして「ひとつだけ」のイントロ。予期せぬ一言。そして「ひとつだけ」。もう前が涙で見えなくなるくらいぐじゃぐじゃになってしまった。あっこちゃんが歌う「ひとつだけ」はいつにも増して温かかった。もうなにがなんだか分からなかった。きっとキヨシローは復活する、そう思えた。ただそれだけの思い出なんだけど、この二つのライブを見ることができた奇跡に感謝したい。では。


今日の一曲:ひとつだけ / 矢野顕子